『AVP』から『プロメテウス』へ なぜリドリー・スコットは「エイリアン」シリーズに復帰したのか?

2011年、『プロメテウス』が公開された。監督のリドリー・スコットにとっては、32年ぶりに『エイリアン』シリーズに復帰したことになる。

「あのモンスターはすでに料理済みだ」

そう言ってシリーズへの幻滅を隠さなかったリドリー・スコットが、なぜ『エイリアン』シリーズに復帰したのか。そのパズルを拾い集めてみたいと思う。

『バイオハザード』シリーズで知られる映画監督のポール・アンダーソンは、『エイリアンVSプレデター』のコメンタリーの中で、暇なときは『エイリアン2』を観ると語っていた。
なるほど、『エイリアンVSプレデター』がホラー映画というよりも、エンタメ性の高いエイリアンとプレデターのバトル映画だったのも納得だ。

リドリー・スコットと『エイリアン』

1979年に公開された『エイリアン』は密室系のSFホラー映画だった。宇宙船という閉ざされた空間で、未知の生物に一人ずつ殺されていく恐怖。乗組員達は全員ブルーカラーで満足な武器すらない。挙句の果てには乗組員の一人が実は会社の密命を受けたアンドロイドで、ミッションのためなら乗組員の命を犠牲にしでもいいとプログラムされていたのだ!これは恐らくスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のHALからの影響だろう。
エイリアン』でメガホンを取ったのは当時42歳のリドリー・スコット。まだ長編映画の経験は『デュエリスト/決闘者』しかなく、SF映画にも興味がなかったという。
だが、1977年に公開された『スター・ウォーズ』にはリドリー・スコットも夢中になった。『スター・ウォーズ』の爆発的なヒットにより、SF映画のブームが到来。その時に20世紀フォックスにあった唯一のSF映画の脚本が『エイリアン』だった。

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「とてもシンプルで、直線的で、はどこまでもまったく無駄のない脚本だった」

スコットは『エイリアン』に惹かれた理由をそう答えている。
ハリウッドでも屈指の映像派と言われるリドリー・スコットだが、『エイリアン』では登場人物たちのセリフが最小限であったのもスコットには好印象だった。

「ひとたび宇宙へ旅立ったら、パパわままと言っていることはない」

『エイリアン』においてスコットが他のSF映画と差別化を図ったのは汚さだった。『エイリアン』の舞台となる宇宙船、ノストロモ号の乗組員は皆労働者たちだ。常に頭のてっぺんから足の先まで綺麗な宇宙服のままのはずがない。頭にはキャップを被り、また足元はスニーカーだったりもする。SF映画の中に、「日常」のディテールを取り込んだのはリドリー・スコットの革新的な部分だろう(次作『ブレードランナー』でそうしたリドリー・スコットの映像美は確立される)。

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『エイリアン2』の成功と評価

そして、1986年、『エイリアン』の続編が公開される。監督を務めたのは『ターミネーター』をヒットさせたばかりのジェームズ・キャメロンだ。

「This time it’s war.(今度は戦争だ)」

キャメロンが作り上げた『エイリアン2』はそのキャッチコピーの通り、一作目のホラー要素を残しつつも大きくアクションに舵を切った作品になった。

スコットは『エイリアン2』の成功を称賛しながらも、「アクションとドンパチ映画じゃないか」とその印象を述べていた。
また、スコットは『エイリアン2』を観た時に「(エイリアンは)宇宙のシロアリか?」と不満を述べたという。

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変質していくエイリアン

エイリアン(ゼノモーフ)がどうやって増殖していくのか。実は『エイリアン』のディレクターズカットでは、エイリアンの卵(エイリアン・エッグ)は繭にされた人間が変形してエッグになる様子が描かれている。しかし、『エイリアン2』では蟻のように、女王(エイリアン・クイーン)が存在し、卵は彼女が産む。映画に現れた無数のエイリアンたちは、言わば働き蟻のような存在なのだ。
リドリー・スコットが監督を務めた『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』を除いては、以降の『エイリアン』シリーズは基本的にはクイーンの設定を継承しているが、その事もリドリー・スコットには不満だったのではないか。

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そして、そんな『エイリアン2』のDNAを最も色濃く取り組んだのが、冒頭に述べた『エイリアンVSプレデター』なのだと思う。
だが、『エイリアンVSプレデター』は確かに娯楽色の強いエンターテインメントではあるものの、詩的な映画ではなかった。

『エイリアンVSプレデター』

『エイリアン』には宗教的な要素と妖しい謎があった。『エイリアン2』には美しい親子愛の要素があった。
だが、『エイリアンVSプレデター』にそれらはなく、ただ両シリーズのお約束ごとと、娯楽色を追求したエンターテインメント作品に徹していた。『エイリアンVSプレデター』の公開当時は『フレディVSジェイソン』同ジャンルの人気キャラクター同士のクロスオーバーもあった。それらはある意味では安易にキャラクターの人気に頼って、それぞれの作品世界の深堀りを放棄したとも言えるだろう。
スコットの目には『エイリアンVSプレデター』もそうした安易なハリウッド・ビジネスに乗ってしまった作品の一つとしか映らなかっただろう。

『アバター』からの影響

ここで言っておかねばならないのがリドリー・スコットとジェームズ・キャメロンは決して仲が悪いわけではないということだ。
変わり果てたエイリアンに失望したリドリー・スコットが再び『プロメテウス』として「エイリアン」シリーズに帰還するのはジェームズ・キャメロンなくしてあり得なかった。
それはリドリー・スコットがキャメロンの『アバター』の撮影現場見学したことがきっかけだった。その圧倒的な世界観に圧倒されたスコットは、自らも再びSF映画に取り組むことを決める。

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そこでスコットの脳裏に浮かんだのは、『エイリアン』に登場したスペースジョッキーだった。『エイリアン』公開後からスコットはスペースジョッキーの正体を探る物語のアイデアを持ち続けていた。

そのアイデアは『プロメテウス』の核になった。

だが、『プロメテウス』は『エイリアン』シリーズとは最大限の距離を置いた「前日譚の前日譚」として制作されることになる。
それはもう『エイリアン』がエイリアン(ゼノモーフ)のデザインをはじめとして、ひとつのスタンダードになってしまったことへの回避行動だろう。

より強大な深淵へ、より巨大なスケールへ。

やはり『エイリアン』を超える『エイリアン』はリドリー・スコットにしか作れなかったのだと思う。

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プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』、そしてリドリー・スコットが製作総指揮を務めた『エイリアン:ロムルス』に至るまで、エイリアン・クイーンは登場していない。

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