『キャリー』なぜキャリーはいじめられていたのか?

『キャリー』

1977年に公開された、ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』。
原作はスティーブン・キングの処女作でもある同名小説。数あるホラー映画の中でも必ずチェックしておくべき重要作だと思う。
『キャリー』は多くの映画に影響を与えた。近年のホラー映画の中でも『悪魔と夜ふかし』『サブスタンス』は明らかにキャリーがプロム会場で出席者を皆殺しにしたシーンのオマージュが含まれている。

しかし、『キャリー』の魅力は怖さではない。個人的には哀しさなのだ。家庭にも学校にも居場所がなくいじめられていたキャリーが、束の間に掴んだ幸せ。しかしそれすらも台しにされてしまう不条理。そしてとうとうキャリーは秘められていた「力」を暴走させるわけだが、そこにはキャリーの怒りと同時に、彼女のやるせなさも表れてるように思う。

物語の冒頭では、体育の授業後にシャワーを浴びている時にキャリーの下腹部から、血が流れ落ちてくる。生理などの知識を全く持っていなかったキャリーはパニックに陥り、それを見たクラスメイトから囃し立てられる。

なぜキャリーはいじめられていたのか?

そもそもなぜキャリーはイジメを受けていたのだろうか?
まずは物語の中での理由から説明していこう。

マーガレット・ホワイトの過去

以下は『キャリー』の解説でも書いてはいるが、映画では語られない部分だ。
マーガレットは父を銃撃戦で失っている。彼女の喪失を和らげたのが宗教だった。果たしてその苦しみを誰が非難できるだろう?
ただ、キャリーのいじめの原因を作ったのもマーガレットだ。彼女が近所の人々を「自分と娘以外は地獄に落ちる」と言いながらカトリックへの寄付を求めていたからだ。ただ、その寄付だけでは生活は苦しいものだったに違いない。映画を見ると、キャリーの自宅は売りに出されている状態だ。
ちなみに、なぜキャリーが超能力者を持っているかは、続編となる映画『キャリー2』の中で父親が超能力者だったと語られている。ただ、この設定を原作者のスティーヴン・キングが認めているかは不明だ。

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キャリーのモデルとなった二人の人物

さて次は物語の中ではなく、キング自身の話だ。実はキャリーにはそのモデルとなった二人の実在した人物がいる。
どちらもキングの高校時代の同級生で、みんなから嫌われ除け者にされていたという。
一人はソンドラ(仮名)といい、トレーラーハウスに母親とふたり暮らし。その家の中には等身大のキリストの磔刑像があったという。
以下はスティーヴン・キングの自伝『書くということ』からの引用で、磔刑像とソンドラへの印象が綴られている。
「目は吊りあがり、口は歪み、茨の冠からは血が滴っている。ぼろぼろの腰巻き以外は何も身につけていない。強制収容所の囚人のように腹は窪み、肋骨は浮きでている。そのとき、私はふと思った。ソンドラは瀕死の神の苦悶の表情の下で育った。としたら、そのことになんらかのかたちで影響されているのは間違いない。だから、臆病になり、みんなから爪はじきにされ、リスボン・ハイスクールの廊下を怯えたネズミのように足早に歩かなければならなくなったのだ」
もう一人はドディ(仮名)という女子生徒だった。いつもみすぼらしい身なりで、周囲からあざけりを受けていたという。

しかし、どちらもキングが『キャリー』を書き始める頃には亡くなっていた。
ソンドラはてんかんの発作、ドディは産後うつによる自殺だった(だが、キングはこの件を高校時代のいじめの後遺症が関係しているのではと推測している)。

ちなみにマーガレットのモデルに関しては、バラバラにした死体から家具などを作っていた殺人犯エド・ゲインの母親である、オーガスタとの類似を指摘する声もある。
オーガスタもゲインに対して、性行為や女性は悪だと教え、共に夫の死を祈らせるなどの異常な教育と精神的虐待を繰り返していた。

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映画から「時代」と「今」を考察する
「映画」と一口に言っても、そのテーマは多岐にわたる。
そしてそれ以上に観客の受け取り方は無限大だ。 エジソンが世界最初の映画スタジオ、通称「ブラック・マリア」を作った時からそれは変わらないだろう。
映画は決して眠らずに「時代」と「今」を常に映し出している。

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