
ティアの背後にはウェイランド・ユタニ社のロゴが映っている
映画の中の悪役とは個人だけではない。企業もまた悪役となることがある。
『ジュラシック・パーク』のインジェン社
『ターミネーター』のサイバーダイン社
『バイオハザード』のアンブレラ社
『ロボコップ』のオムニ社
などがその一例だろう。
そして『エイリアン』のウェイランド・ユタニ社もそうだ。
『プレデター:バッドランド』
2025年に公開された『プレデター:バッドランド』は、若く未熟なプレデターと、下半身のない少女のアンドロイドが主人公だが、劇中にウェイランド・ユタニ社が登場すると分かると、映画ファンの期待はさらに高まっていった。
「まさか、『プレデター』と『エイリアン』のクロスオーバー作品になるのか?」
「『エイリアンVSプレデター』が再度映画化されるのか?」
残念ながら、劇中の中にエイリアンの登場は無かったが、『エイリアンVSプレデター』が公開されてからもう20年以上が経つ。
同作には『エイリアン』シリーズ、『プレデター』シリーズのお約束やオマージュがふんだんに盛り込まれていた。

『エイリアンVSプレデター』でエイリアンと戦うプレデター
エンターテインメントとしてはよくできた作品だと思うが、監督のポール・アンダーソン自身がエンターテインメント一辺倒の監督でもあり、どこか深みのない大味の作品だったことは否めない(ちなみにリドリー・スコットは『エイリアンVSプレデター』によって『エイリアン』シリーズへの興味を失ったと言われている)。ここらで深化させた『エイリアンVSプレデター』を観てみたいと思うファンも少なくなかっただろう。
『プレデター:バッドランド』にはなぜエイリアンが登場しなかったのか?
では、なぜ『プレデター:バッドランド』にはエイリアンが登場しなかったのか。
今回はここから『プレデター:バッドランド』が『エイリアン』シリーズのどの位置に存在するかを考察していこう。
まず、『エイリアン』シリーズの時系列は以下の通り(ここではクロスオーバー作である『エイリアンVSプレデター』、ドラマ版の『エイリアン・アース』は除く)
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『エイリアン』シリーズの時系列
2093年『プロメテウス』
2104年『エイリアン:コヴェナント』
2122年『エイリアン』
2142年『エイリアン:ロムルス』
2179年『エイリアン2』
2270年『エイリアン3』
2470年『エイリアン4』
『プロメテウス』では、人類の誕生のきっかけを知るために、クルーはアンドロイドのデイヴィッドとともに未知の惑星へと出発する。デイヴィッドは惑星にあったエンジニアの遺物を使い、クルーを実験台にして研究を始める。
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続編の『エイリアン:コヴェナント』ではデイヴィッドの目的が明らかになる。それは神が人間を作ったように、自らも人間を超える生命を創造するという野望であった。おそらくだが、「人間を超える生物を作る」という目的はデイヴィッド自身の案ではなく、プログラミングされたものだろう。むしろ、その為に作られたアンドロイドであったかもしれない。そうでなければなぜ『エイリアン』でウェイランド・ユタニ社のアンドロイドであるアッシュがゼノモーフのことを知っていたのか、辻褄が合わないからだ。
『エイリアン:コヴェナント』でついにデイヴィッドはゼノモーフの創造に成功するが、これに関してはデイヴィッドが作り出したのはオリジナルの生物ではなく、エンジニアが作り出した生物をリバースエンジニアリングで復活させただけではないかという考察も存在する。
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その証拠として、『プロメテウス』に登場するエンジニアの惑星の壁の壁画にはゼノモーフに酷似したレリーフが彫られている。(同様に1997年を舞台にした『プレデター2』にもゼノモーフの頭骨がプレデターの戦利品として登場するが、こちらは完全なお遊びとのことで、一連の時系列からは除外する)。

『プロメテウス』から。壁画にはゼノモーフにそっくりのレリーフが
ウェイランド・ユタニ社の目的
ウェイランド・ユタニ社がゼノモーフをどのように利用するのかということに関しては、長らく生物兵器としてしか言及されなかった。
しかし、『エイリアン:ロムルス』でようやくその目的が明らかになる。それは、ゼノモーフのDNAを利用して、過酷なテラフォーミングの環境にも負けないタフな人類を作り出すことだった。
『プレデター:バッドランド』におけるカリスクの捕獲目的も、カリスクの持つ驚異的な自己再生能力を利用するためだった。

『プレデター:バッドランド』でデクは最強のカリスクに挑む
突き詰めれば、この2つの目的は人類のアップデートというほぼ同じ目的を指していることがわかる。『エイリアン:ロムルス』の時点でウェイランド・ユタニ社はゼノモーフのDNAを獲得している。
2016年に公開されたホラー映画『ドント・ブリーズ』で一躍脚光を浴びたのが、南米ウルグアイの映画監督であるフェデ・アルバレスだ。 アルバレスの長編デビュー作は『死霊のえじき』のリブートであった。『ドント・ブリーズ』の後も『悪魔のい[…]
『プレデター:バッドランド』の時系列
考察1.『エイリアン』より前?
では、『プレデター:バッドランド』はその前と後、どちらの話だろうか?まずはアンドロイドの違いから考察してみたい。
『プレデター:バッドランド』が『エイリアン』と同時期の話かと言われるとそれも怪しい。
たしかに「マザー」など『エイリアン』と共通の設定もあるものの、アンドロイドの機構が全く違うからだ。『エイリアン』のアッシュ以降のアンドロイドの体内構造はメカニックな機械ではなく、どちらかといえば有機的なものだ。『エイリアン2』のビショップ、『エイリアン4』のコールも同様である。
現在、私たちの周りではアンドロイドと呼べるほどのものではないにしろ、様々な機械が存在している。将来、アンドロイドが実現するとして、先に実現するのはやはり機械的なアンドロイドなのは間違いない。
そう考えると『プレデター:バッドランド』の時代設定は『エイリアン』より前なのだろうか?
考察2.『エイリアン:コヴェナント』より後?
より正確な時系列を知るために、次はマザーについて見ていこう。
マザーはウェイランド・ユタニ社の中枢ともいえる管理AIの名称で、正確には「MU/TH/UR」と表記する。さて、このマザーだが『プロメテウス』には登場せず、それから11年後の世界である『エイリアン:コヴェナント』に登場している。
ここから、『プレデター:バッドランド』の時系列は『エイリアン:コヴェナント』以降と推測ができる。さらに絞り込みを進めよう。
考察3.『エイリアン2』より前?
さてこのマザーだが『エイリアン:ロムルス』には登場するものの、『エイリアン2』には登場しない。となると時系列としては『エイリアン:ロムルス』と『エイリアン2』の間の出来事と考えても不思議ではない。
そうなるとウェイランド・ユタニ社は機械的なアンドロイドと、有機的なアンドロイドの2タイプを並行して製造していた事になる。
また、アンドロイドについてもビショップは「アンドロイドにも恐怖心はある」と言っていたが、より、人間らしいアンドロイドとして製造されたのが有機型のタイプだとも言えるだろう(『エイリアン4』でも、コールが「人間より人間らしい」と、評されるシーンがある)。
考察4.『エイリアン4』より先?
だが、ここではマザーのバージョンに着目しよう。『エイリアン』のマザーのバージョンは6000、『エイリアン:ロムルス』では9001、そして『プレデター:バッドランド』のマザーのバージョンは062578だ。

『プレデター:バッドランド』から。マザーのバージョンが062578とわかる
『エイリアン:ロムルス』は『エイリアン』の20年後が舞台なので、ここからマザーのバージョンアップデートは年間で150回(!)だと推測できる。『プレデター:バッドランド』のマザーのバージョンは062578、つまり、『エイリアン:ロムルス』から『プレデター:バッドランド』までは53577回のアップデートだ。これは単純計算で357年分のアップデートである。
そこから導き出される『プレデター:バッドランド』の時代設定は西暦2499年と算出される。これは『エイリアン4』より未来の時代設定になってしまうが、そもそも『エイリアン4』の時代にはウェイランド・ユタニ社は潰れて存在しないことになっている(完全版で世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートに買収されたということが明かされている)。
加えて、『プレデター:バッドランド』の中でティアは地球に住むオオカミの話をするが、『エイリアン4』の世界では、地球は荒廃しており、オオカミが存在しているとは考えづらい。この矛盾をどう解消できるか考えてみよう。
考察5.『エイリアン2』よりは先?
考えられるのは、マザーが急激な速度でアップデートするようになったということだ。これは想像だがおそらく、最初は人の手でアップデートされていたのだろう。それがいつしかマザーがマザー自身をアップデートし出したのではないか。であれば24時間ひとたびも休まずに驚異的な速度でアップデートを繰り返したとしても不思議ではない。
前述した「なぜ『エイリアン2』にマザーが登場しなかったか」という疑問については、そもそも『エイリアン2』に登場する宇宙船スラコ号は海兵隊のものであり、ウェイランド社のものではなかったとも説明できる。そもそも『エイリアン2』にはもう一つの母親が登場しているではないか。ちなみにウェイランド・ユタニ社によるゼノモーフの標本ナンバーはXX121。カリスクはXX0552である。

『エイリアン2』から。エイリアン・クイーン
『エイリアン2』では地球のシーンもあるが、自然もあり、オオカミも今と変わらず暮らしているだろう。
『プレデター:バッドランド』にゼノモーフが登場しなかったのは、すでにウェイランド・ユタニ社がゼノモーフのDNAを獲得していたからだと思う。そして、ゼノモーフにはない自己再生能力を人類に適用させるためにカリスクの捕獲をもくろんだという仮説も成り立ちそうだ。
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公式からの解答
と、考察していたのだが、この記事を書いて数日後、公式に『プレデター:バッドランド』の時系列が明らかになった。ダン・トラクテンバーグ監督がvariety誌の中で以下のように述べている。
「本作は『プレデター』と『エイリアン』の両方の中で、意図的に最も未来を舞台にしています。
制作当時は『エイリアン:ロムルス』がどうなっているのかよく分かっていませんでしたし、『エイリアン:アース』についても、自分がどの程度意識していたかさえ分かりませんでした。だから、誰の足元にも踏み込みたくなかったんです。自分たちらしいことをやりたかったし、利己的な部分もありますが、様々な時代設定の『プレデター』を数多く手がけてきたので、本作が『エイリアン4』よりも未来を舞台にしていることにワクワクしていました」
ウェイランド・ユタニ社は世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートに買収されたはずだが、復活したのだろうか?いくら公式発表とは言えど、納得のいかない部分はある。
公式回答を踏まえた考察
しかし、現実の世界を見てみると70年と言わず、潰れた途端にブランドの復活なども当たり前に行われている。カネボウがそうであるし、日本航空もそうだ。
ウェイランド・ユタニ社も、自社に多くの知的財産やビッグデータ、各種の先端技術などの他社にない財産を有しているのは間違いない。それらを持っている限り、ウェイランド・ユタニ社は比較的復活しやすい会社ではなかっただろうか。
そして、ティアが狼の話をしたのも、地球でオオカミを見たわけではなく、単にデータでインプットされている情報を元に話をしたのかもしれない。もしくは、地球では人が住んでいた大都市ほど荒廃しているものの、意外と自然は手つかずのままであったりしたのかもしれない。
こんな風にまた様々に考察してみる余地はある。
さて、『エイリアン』シリーズにおいては、現在『エイリアン:ロムルス』に次ぐ続編の企画が進行中だ。
『プレデター:バッドランド』へのアンサーとして、『エイリアン』シリーズにプレデターが登場することはあるのだろうか?