『プレデター2』で登場したフリントロック銃の正体とは?

※以下の考察・解説には映画の結末のネタバレが含まれています


プレデター』の解説の中で、『プレデター』は唯一、アーノルド・シュワルツェネッガーなしでも成功した作品だと書いた。
だが、実際は『プレデター』の続編を作る話が出た時に、シュワルツェネッガーにもオファーはあったという。だが、「前作の良いところが失われてしまった」として、脚本を読んだ段階で出演を断っていたそうだ。
結局その続編となる『プレデター2』は『リーサル・ウェポン』で有名なダニー・グローヴァー主演で製作された。

『プレデター2』の意義

『プレデター2』の舞台は近未来の犯罪都市と化したロサンゼルス。前作はジャングルの中であったが、今作はコンクリートジャングルの中だ。「正体不明の敵」というミステリーやサスペンスの要素が強かった前作と比べると、『プレデター2』ではプレデターのキャラクター性をより掘り下げた作品だと言える。
特に、プレデターがただ野蛮なだけではなく、家父長制的な序列を持っていたり、騎士道とも呼べる礼節を備えていることは、プレデターのキャラクターを決定づけるとともに『エイリアン』に代表されるようなそれまでの宇宙生物とは一線を画す、唯一の存在となり、今日の人気にも繋がっていったように思う。
その象徴とも言えるのが、エンディングでリーダー格のプレデターがハリガンに渡したフリントロック銃だろう。

 

『プレデター2』のエンディング「受け取れ」と言って、ハリガンに銃を渡すプレデター
© 1990 20th Century Studios, Inc.
ハリガンを戦士として認め、銃を渡すプレデター

この作品以降、プレデターは 「たとえ敵であっても強い者は認め、その証に何かしらの武器を渡す」のが彼らの風習として確立している。
例えば、『エイリアンVSプレデター』では、エイリアンを倒した女性、レックスを戦士と認め、エルダー・プレデターがプレデターの武器であるスピアを彼女に手渡す。

1715年製のフリントロック銃

さて『プレデター2』でハリガンがプレデターから受け取った銃は、映画の中では1715年製であることがわかるのみであった。プレデターがはるか昔から地球に狩りに来ていたことはわかるものの、それ以外のバックグラウンドは全くの謎で、それゆえにファンの間ではこの銃について様々な考察や意見が交わされることになった。

 

『プレデター2』に登場した1715年製のフリントロック銃
© 1990 20th Century Studios, Inc.

今日、この銃について公式に2つの物語が作られている。今回はそれらを紹介しよう。
一つは1996年に発表された『プレデター: 1718』というコミックだ。『Decade of Dark Horse』#1に掲載された作品である。

『プレデター: 1718』内の銃

本作では、銃の持ち主であったモロッコ系イタリア人海賊のラファエル・アドリーニとプレデターとの遭遇が描かれている。
アドリーニは海賊船の船長であり、かの銃は彼が他の海賊から奪った戦利品であるも設定されている。奪った時期は1715年4月とされており、銃には刻まれていたものは所有者であるアドリーニの名前と彼が銃を手に入れた年であったことかわかる。なお、この銃にはかつて伝説の海賊と呼ばれたアイヴァー・ラグナーソンの持ち物だったという設定もあるそうだ。
コミックに収録されている、この銃についてのアドリーニとプレデターの物語は以下のような内容になる。
物語の舞台は1718年。海賊船の船長である、ラファエル・アドリーニはアフリカのある島へ上陸する。しかし、アドリーニとその部下は宝の取り分を巡って対立し、部下たちはアドリーニを殺そうとする。
そこに現れたのがプレデターだ。プレデターは期せずしてアドリーニと共闘し、アドリーニの部下たちを皆殺しにする。
そして唯一生き残ったプレデターとアドリーニは真の勝者を決めるべく、互いに剣を向ける。その時、生きていた部下の一人がアドリーニを背後から撃つ。宝箱を持って逃げようとするその男をプレデターは抹殺する。
撃たれたアドリーニは息も絶え絶えに、プレデターに「受け取れ」と言い、銃を手渡す。それが例の銃だ。そしてプレデターは亡くなったアドリーニを埋葬し、その墓に「受け取れ」と自身の剣を投げ渡す。
以上が『プレデター: 1718』の内容で、ファンも長い間「正史」として認識していた。
だが、2022年に公開された『プレデター:ザ・プレイ』はその内容を更新するものだった。

『プレデター:ザ・プレイ』内の銃

『プレデター:ザ・プレイ』にもフリントロック銃やその持ち主であるラファエル・アドリーニが登場するのだが、今作におけるアドリーニは海賊ではなく、通訳だ。
『プレデター:ザ・プレイ』の舞台は1719年。コマンチ族の女性、ナルが主人公だ。本作に登場するラファエル・アドリーニはフランス人毛皮交易商人の一団の通訳として登場し、ナルを捕らえ、プレデターのことを聞き出そうとする。
その後アドリーニはプレデターに襲われ、足を切断されるが、再会したナルから治療を受ける。そのお礼にアドリーニがナルへ渡したものが、例のフリントロック銃という設定だ。
最終的にナルはプレデターを倒し、その銃とプレデターの頭部を戦利品として部族へ持ち帰る。

 

『プレデター:ザ・プレイ』に登場した1715年製のフリントロック銃
© 2025 20th Century Studios, Inc.
『プレデター:ザ・プレイ』に登場した1715年製のフリントロック銃。よく見ると細部が異なる

余談だが、この時『プレデター2』で使われた小道具の銃は現存していなかったため、 スタッフが『プレデター2』のピストルの精巧なレプリカを制作したYouTuberから借りて撮影したものだという。

『プレデター:ザ・プレイ』で描かれたフリントロック銃の新しいエピソードだが、これは監督のダン・トラクテンバーグが『プレデター: 1718』の存在を知らなかったためであったそうだ。
なぜナルの手に渡ったはずの銃を『プレデター2』でプレデターが手にしているのかの謎は残るものの、ダン・トラクテンバーグの頭の中には、すでにその答えがあるという。ダン・トラクテンバーグは2025年にも『 プレデター:バッドランド』でシリーズの監督を務めているが、遠い未来を舞台にした本作にフリントロック銃は登場しなかった。
さて、今後フリントロック銃の「その後」が描かれるのか、期待して待ちたいと思う。

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BLACK MARIA NEVER SLEEPS.

映画から「時代」と「今」を考察する
「映画」と一口に言っても、そのテーマは多岐にわたる。
そしてそれ以上に観客の受け取り方は無限大だ。 エジソンが世界最初の映画スタジオ、通称「ブラック・マリア」を作った時からそれは変わらないだろう。
映画は決して眠らずに「時代」と「今」を常に映し出している。

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